家を建てる。 [暮しの手帖]


久々にオリバー君を味わった翌週には、しっかりと雪が降った。
設計士さんに呼ばれて、1月の最終週とその翌週、2週続けて2日ずつ
工務店さんの資材置き場に場所を作ってもらって、家に使う部材の塗装をすることになっていた。

相棒と二人、汚れてもいい格好で全身をくるんで、防腐剤の入ったオイルステインを
屋根裏の軒下の部分など、屋外に使う部材に塗っていく。

色は「エボニー」という黒に近いグレーを選んだ。
母屋はガルバリウム鋼板という塗装して折り目を付けた金属板で覆ってしまうのだけれども
車庫は外装も板貼りの予定。
ガルバリウム鋼板は黒で、アルミサッシも黒。
丸4日間、暖房のあまり効かない倉庫のような場所で、ひたすら刷毛を動かしていたのだけれども
自分たちの家を造る作業に実際に加わっているのだと思うと
なんだかとてもわくわくして楽しかった。
ただ、腰が痛くなって身体は辛かったけどね。
二人揃ってカイロを貼って、少し慣れてきた2週目は灯油ストーブを置いてもらい
今の我が家から電気ストーブとサーキュレータも持ち込んで、何とか乗り切った。
寒さのせいで乾きの遅い塗った材料をひたすら移動しながら2回塗りを終えると
杉板や米松の質感が浮かび上がってきて、なかなか良い雰囲気に仕上がったと思う。
オイルステインの匂いが身体にもクルマの中にも滲み込んでしまって、
すっかり抜けるまでに一週間かかった。
☆☆☆
実は、今回頼んだ工務店さんに行きつく前に、別の設計事務所も訪ねてみたのだけれども
我々の限られた予算を伝えると、「その金額で今まで建てたことはないです」と
あからさまに顔を曇らせて言われてしまったのだった。
どんなにシンプルに考えてもあと数百万足りない、というばかりで
特に提案もなく、我々にはどうしようもなかった。
その後、いくつかの土地を見て回って、これはと思った物件を分譲していたのが
今回頼んでいる工務店さんだった。自社で整地して、木材を敷き詰めた舗道まで整備されていた。
「家というものをですね、幾ら出すからどういうものができますか?、と
まあそういう買い物と思って見える方が多いんですけどね、
私はね、家っていうものは本来お施主さんが建てるものであって
こういう家を建てたい、でも自分達では造れない部分をお願いしたい、ということで
私達を使ってもらえたらいいと思うんですよね」
社長さんの話はなかなか素敵だった。
お互いにアイデアを持ち寄って、まとめてもらったプランがとても魅力的だったので
設計は比較的スムーズにまとまり、その後の詳細な見積で予算を超えてしまう部分を
悩みながら削って、最終的にはかなりの部分の塗装を自分たちでやるという仕様で
話がまとまったのが去年の秋の終わりのこと。

「今週は塗装は無いです。ゆっくり休んでくださいね(笑」
若い設計士さんはちょっと高校球児を思わせる純真な目をしていて
夏に最初のアイデアを持ち寄って話をした時にすぐ、「この人に任せよう」という気持ちになった。
そして、先週のこと。
「柱が立ち始めました、よかったら見に来てください」というメールをもらって
晴れ間の広がってきた昼過ぎにクルマで向かってみると...おお、形が見え始めている!

しばらく職人さんたちとも話をしてから、クルマで反対の西側に回ってみる。
真東に向かって立つと、正面は美ヶ原の山並み。
片流れの屋根は南向きに下がっていて、北側の2階の窓からは北アルプスが見えるはず。

そして今日。
屋根の下地も張り終って、サッシ屋さんと現場で窓の高さなどを確認する打合せ。
何度か降った雪がまだ畑の表面にはしっかり残っている。

初めて建物中に入ってみた。
木のいい香りがする。感激。
小さな造りだけれども、これで十分なんじゃないだろうか。
屋根の張り出した部分の裏側に、我々が塗った部材がしっかり見えている。


オートバイ3台+αを収納できる車庫。ここだけは贅沢な造りなのだ(笑
雨の休日はここで過ごすことが確実に増えそう。
「あとで釘を打ったりできるように、ここだけは内側も板貼りがいいんじゃないかと。
それと、何かオートバイの部品を何処かに使えないかと思って考えてるんですけど。
ドアストッパーとか取っ手とかに...」
ワタクシが言ったのではなく、若い設計士さんがそんな風に言ってくれたのだ。
こういう共同作業はとても楽しい。

柱と梁の組み合わせを見ていると、壁が立って見えなくなってしまうのが惜しい気がする。
「先日はお茶菓子をご馳走様でした!」
職人さんたちは、この寒さの中でも白い吐息を吐きながらてきぱきと動いていて気持ちが良い。
「彼はまだ20代なんですけど、木の目を読むのが上手いので任せてるんです」
設計士さんが言う。この工務店さんは大工さんも自社の社員だそうで、
一緒に過ごしているうちに評判が良い理由がよくわかった。
今月の終わりからは、また別の部材の塗装が待っている。
春に引き渡された時点でも、内装は壁の下地までしか仕上がっていない筈で
最後は我々自身で塗って仕上げるのだ。大変そうだけど、楽しみでもある。
何処かに絵でも描いちゃおうかな...
タグ:家づくり






